国文学者の作者が中世日本の人間模様・生活において現代と変わらない点、あるいは変わっている点をユーモラスにわかりやすい語り口で紹介している。
時代が離れていても男と女というものは変わらないのだなあ、というエピソードは豊富。学生の頃は「昔の人は何だか変な事ばかりしていたのだなあ。」と別世界のように違和感を感じていたが作者は丹念に古典を調べ上げることで当時の宗教観・倫理観・価値観を推理して昔の人の奇妙とも思える行動を説明してくれる。例えば子供が親孝行することは当時は重要な「義務」でありそれを履行しなければたとえ10歳未満の子供であっても容赦なく家を追い出されること。夫婦間の貞節を守る事以上に信仰心の方が大事であり、浮気をしても普段からの信仰が真面目ならば仏様が何とか助けてくれる、というエピソードなどが興味深い。国文学など真っ先に不要となる学問だ、と作者は自虐的だが「立場が変われば物事の考え方は大きく変わる」ことを古典を通じて再認識させられる。