みんなの読書ブログ

みんなの読書記事を更新します。

スポンサーリンク

感想・書評『「あの家に暮らす四人の女」三浦しをん』ネタバレ注意「舞台は東京杉並区のある古いお屋敷」(レビュー)。 #読書

【おすすめ情報】知らない人は損している!「アマゾン業務用ストア」で便利でお安く。

恋人とか、結婚とか、生産性とか、老後とか、資産とか、そういう言葉に絡め取られて、ちょっと息苦しいなぁと思った時。
幸せになって欲しいという自分以外の誰かからの願いをプレッシャーに感じて、今のままの自分は不幸せなのかしらと思い違いそうになった時。
そんな時に読んで欲しい小説です。
舞台は東京杉並区のある古いお屋敷。女が4人で暮らしています。半引きこもり刺繍作家の佐知、気ままな母・鶴代、佐知の友人の雪乃、雪乃の会社の後輩の多恵美、4人のうち二人は血縁ではないという、奇妙な4人暮らしです。さらに、もうひとり、敷地内の掘っ立て小屋に住む唯一の男性、守衛の山田。
佐知と鶴代の噛み合わない親子の会話や、どうにもうまくできない山田への接し方、雪乃の水難、多恵美の元カレストーカー事件、鶴代の過去と河童の秘密など、事件や珍事が次々起こるのですが、そのどれもがとても愉快で軽やかに思えてしまう。
きっと、一見普通ではないこの家の空気が、ゆるやかで居心地よいので、どんな出来事もすとんと飲み込めてしまうのだと思います。
ただ、この現実から隔離されたような時間がずっと続くとは佐知も思っておらず、この居心地の良さは一時のものだと感じてはいるので、この関係を大切にすることができていて、そこに、親族ではないけれども、「身内」のような暮らしを羨ましいと感じるのです。
そして、この物語のもう一つの核となるのは、家にはもういない佐知の「父」の存在です。女ばかりのおもしろおかしい共同生活を送る中で、佐知がどこにもいない「父親」というものを山田のような存在なのかもしれないと思いめぐらしたり、家庭とは何かとつきつめて考えてみたりするのが興味深いです。そして物語の後半で、タイトルが佐知が語るにしては遠さの含みある「あの家」なのかが解き明かされて、ストンと納得出来てしまいます。
読んでる間にいつの間にか肩の力が抜けてゆきます。
是非、今が、不幸せじゃないのにちょっと苦しくて、という方は読んでみてください。