「物語のなかとそと　江國香織散文集」　江國香織・著・ネタバレ注意「お風呂好きで毎日二時間入浴すること、果物を大量に食べること」（レビュー）。 #読書

過去15年にわたって書かれた掌編小説とエッセイを一冊にまとめた散文集です。装丁はシンプルで地味ですが、ひっそりとした本の中には江國ワールドが全開になっています。
10代の頃から江國さんの作品を読み続けてきましたが、その世界観はずっと変わらないですね。お風呂好きで毎日二時間入浴すること、果物を大量に食べることなど、江國さんの日常生活が垣間見えます。パンとバターが大好きなのは私も同じなので、なんだか勝手な親近感を覚えて嬉しくなりました。
冒頭のエピソードで医者に「あなたの異様さは言語を絶する」と言われ、それは職業柄困ると切り返した場面では思わず笑ってしまいました。ひたすらに読んで書いて暮らしてきたという、江國さんの読書歴を一覧で見てみたいものですが、それはもう膨大な量なのでしょうね。物語の中にいる時間があまりに長いため、自分が年を取ったことに驚くという話にはさすがに唖然としました。すごい。本の持つ途方もない力に魅了され、だから読書はやめられないんだよなと改めて感じた一冊でした。