ヨシタケシンスケさんが好きなので、作者名だけ見て即座に手に取ったのですが、読んでみるとかなり小さい子向けの内容でした。文字はとても少なくて、子どもへの読み聞かせにぴったりの一冊です。
主人公が朝起きて、日課のように仕事を始めるところから物語はスタートします。
白い帽子をかぶってボールに入ったものをひたすらにのばしてこねる様は、一心不乱にパン作りをしているように見えます。しかし途中からはキッチンという枠を飛び出して、主人公が自由に伸ばしたり巻き付けたりしながら、そのパン生地と触れ合うのです。シンプルな線で描かれているのに、ぱぁっと花が咲いたような笑顔や、完全に肩の力を抜いて心から楽しんでいるような姿には目を奪われるものがありますね。
そして予想外の展開で終わるラストは、これは果たしてどういう意味だったのだろうと考えさせられました。パン生地を擬人化することで、実はパン生地は自分自身を表現しているのか。人間が生きていくことをパン作りに例えているようにも思えて、興味深かったです。