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感想・書評・喋々喃々、小川糸著、小川糸らしいしっとりとした日本らしい風景描写や主人公の心境表現に引き込まれる・ネタバレ注意(レビュー)。 #読書

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小川糸の作品は、「ツバキ文具店」を読んで以来、主人公の過ごす日常を丁寧に描写する表現と自分でも作れそうな美味しそうなお料理、そして現代にも続く日本の良き慣習を魅力的に綴られるところに惹かれました。
喋々喃々は、私が好きな小川糸の作品らしさが溢れています。主人公は、おそらく20代半ばかなの女性で、古呉服屋を一人で営んでいます。紬、お召しなど若い女性が気軽に買って着れる和服を取り扱っている店主の日常は、着物を少々興味がある私には、入り込みやすい設定でした。彼女の振る舞いや和服コーディネートの描写を頭の中でカラー映像化(想像)しながらこの本を読んでいて楽しめました。
ついついお惣菜を買ってしまうような家庭料理をささっと作る主人公に尊敬の念も寄せつつ、小川糸の描写技のおかげで、主人公が作った料理を食べて満足しているような美味しい錯覚に陥れるシーンが多いのも、この本の楽しくところです。
主人公は、母親の浮気をキッカケに両親が離婚し、姉妹バラバラになった境遇で育った女性です。学生時代の恋人が妹と仲良しした事知り別れ、大事だった恋人を許せず拒否したら別の女性と経験されてしまいます。でも彼のことが忘れられずにいた所に。偶然お店を訪れたビジネスマンに両想いの恋心を育てて行きます。
相手は家庭がある男性です。
恋いする乙女の年頃は過ぎた歳なのに、ウキウキ、ワクワクする心境の表現やそんなときの主人公の行動が淑やかな女性らしくて好きです。
でも冷静に読めば、不倫なんですよね。しっとりと美しい日本文化を楽しむデート(日本料理、日本酒、神社、花見、花火)は、大の大人のデートなのに初々しい二人の行動は微笑ましいと感じます。
でも主人公は母親の浮気で幸せな家族生活を失ったので、誰も傷つけたくない感情と彼への恋心に揺れ動きます。姉妹の関係も、ぎこちない心境を隠して姉としてしっかり振る舞う主人公に涙を誘われる場面もありました。
要所で近所の老人との祖父孫のような下町デートは粋でありながら老人がちょこっと恋愛アドレスしてくれるのは、物語全体に良いスパイスとして効いています。これは小川糸マジックですね。
舞台は東京の下町、谷中。谷中霊園の近くであり、不忍池も近い。主人公が徒歩で移動することが多いので、街の様子や地域文化に祭などが登場し、物語の街へ散策に出かけたくなるほど、主人公を通じて魅力的な街の風景や人々の生活がイキイキと伝わってきます。
散策するのに良い季節になったら、谷中へ足を運んでみたいと思います。
主人公の不倫がこの後どうなっていくのか気になりますが、主人公には幸せになって欲しいけれど、やはり個人的主観では、妻子ある相手であることを深く考えてねと主人公に会って伝えたい気持ちを持ちました。