「憂き世店 松前藩士物語」 宇江佐真理・著
松前藩が国替えとなり、浪人となってしまった「相田総八郎」の妻「なみ」が主人公です。先に江戸に出ていた「総八郎」を頼って何のあてもなく江戸へ出てきた「なみ」が「総八郎」に会えたのは、全くの偶然でした。
この後、貧乏長屋に落ち着き、内職をしながら細々と生きていくのですが、この長屋暮らしが生き生きと活写されています。同じ長屋に住む同士が助け合い、支え合って暮らしていくのです。この下町暮らしの良さは、昭和のころまでは残っていましたが、現在ではどうでしょうか?
懐かしい下町の暮らしが、生き生きと目の前に繰り広げられます。貧乏な中で、娘が生まれます。長屋の皆に助けられて、無事に成長していきます。
主人公の「総八郎」は、帰藩がかなうことをずっと願っています。もうあきらめようかと思う頃に、やっとその夢はかないます。
この先また大変な苦労が待っていることでしょうが、江戸の長屋暮らしが、これからの役に立つことでしょう。
何も知らなかった浪人の妻が、生き抜く力を身に着けることができた、江戸の長屋暮らしです。