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感想・書評『反転する漱石 増補新版:石原千秋』ネタバレ注意「テクスト論を武器に斬新な読みを展開」(レビュー)。 #読書

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『反転する漱石 増補新版』(石原千秋):伝説の研究書、ついに再刊

日本近代文学の研究者として確固たる地位を確立した石原千秋氏。テクスト論を武器に斬新な読みを展開し、今まで当たり前だと思われていた読み方をガラッと反転させてしまう技術は多くの人をアッと言わせています。

そんな石原千秋氏がはじめて上梓した『反転する漱石』を増補新版で再刊したのが『反転する漱石 増補新版』です。永らく絶版が続いていた研究書が再び日の目を浴びるのは珍しいことですが、本書の内容を見れば「それも当然」と言わざるを得ません。みんなが当たり前と思って共有している読み方を、漱石作品の本文を根拠にして突き崩していく作業には並々ならぬ労力と泥臭くて入念な検証作業が必要となります。石原千秋氏が掲示する漱石作品の新しい読みは、この読者には見えない多大な努力によってもたらされ、私たちをアッと言わせているのです。斬新な読みの根底にある多大な努力。石原千秋氏の輝かしい業績の裏にある泥臭さ。『反転する漱石 増補新版』にはそんな石原千秋氏の研究者としての生き様とその生き様から生まれた新しい読みが刻まれています。日本文学に興味がある人は必ず読んでおくべき1冊です。