流転する弔い:『弔いの文化史』(川村邦光)
人間は生きていれば必ず死ぬものです。そして死が訪れれば葬儀をした後、丁重に弔うのが日本の風習です。この弔いがどのように人々の間で行われ、継承・変化していったのかを解き明かしたのが『弔いの文化史』です。
この本ではモガリ・念仏結社・イタコの口寄せ・ムカサリ絵馬・遺影といった人々の弔いが取り上げられています。今となっては、これらの弔いは迷信・世迷い言と切り捨てられてしまいますが、実は死者と生者を結ぶ貴重な回路であったことが、本書からは学ぶことができます。特にイタコは日本にはほぼいなくなってしまったため、この本は在りし日の日本人の風習を記録したという意味でも、かなり貴重な1冊だと思います。また、ムカサリ絵馬や遺影といった弔いが現代社会で急速に広まっているという指摘には驚きました。日本人の死生観や弔い方は時代によって変化しているのです。少子高齢化を迎える中で、日本人一人一人が自分の納得する死生観を作り上げるために、本書は必読の本だと思います。