戦乱詩の魅力、ここにあり!:『中国戦乱詩』(鈴木虎雄)
中国は長い歴史の中で、何度も大きな戦いを経験してきました。そのためか、中国の漢詩には戦乱が1つのテーマとなっています。『中国戦乱詩』は中国の代表的な詩人・文書による戦乱詩を1冊に収めた本です。
戦乱詩と聞くと、戦士の士気を鼓舞する内容や戦勝者を讃える内容ばかりだと感じると思います。しかし、実際には戦争に敗れた者の心情や戦乱に振り回されて無為の時間を過ごしてしまった無念さのようなものも詠まれています。この戦乱に敗れた側の心情を歌うのは、日本にはあまり見られないことだと思います。中国の長い戦乱は必然的に敗者への思いやりを抱かせたのでしょうか?『中国戦乱詩』を読んでいくと、戦争における勝者と敗者だけでなく、その両者を思いやる人が存在していたことが分かります。どうしても避けられない戦乱であれば、せめて誰かを慈しむことを忘れない人でありたい。そんな気持ちを抱かせる本でした。本書に収録される漢詩には現代語訳が付いているので、誰でも読むことができます。これを機会に、戦乱詩の魅力に触れてみてはいかがでしょう?