田野大輔・柳原伸洋編『教養のドイツ現代史』。その実態は歴史と映画紹介本でした。
ドイツの近現代史に関する歴史本で、ビスマルクのドイツ帝国から東西ドイツの統一後までを俯瞰し記述されていました。しかし他の歴史本と大きく異なる点が、映画や漫画などのサブカルチャーを中心に書かれていることです。
どちらかというと、映画を紹介するという主題に合わせて、ドイツの政治や文化についても詳しく触れておくといった流れで構成されていました。だから、「この映画はどういった歴史背景を元に作られた映画なのか」といった視点や「これは映画化されるほどの歴史的で重大な事件だった」といった知識も得られます。
個々の映画の解説は簡素ですが、映画そのものよりも時代背景への言及が詳しくて嬉しいです。ただし、「歴史で重要か」という観点よりも「映画化されたという事実」に絞られて記事が並んでいましたので、例えば第二次世界大戦は、戦場で戦った兵士たちの描写やら、ヒトラー総統個人がかもし出すイメージやらに、かなり誌面を費やしていたように思えます。