『新しい免疫入門』(審良静男・黒崎知博):免疫学の最先端
免疫という言葉は医療関係者や研究者ではない一般人にも広く知られていますが、そのメカニズムはほとんど知られていません。それどころか、研究者にも免疫のメカニズムははっきりしないところが多いのです。
『新しい免疫入門』は免疫のメカニズムで現在判明していることを紹介しつつ、免疫研究の可能性を示している1冊になります。内容は必ずしも簡単ではありませんが、全11章を丁寧に読んでいけば理解できるような形になっていますし、大事な考えや知識は本書で繰り返し説明されるので、理解に困ることはありません。この本を読んでいくと、免疫というシステムがいかに高度なものであるかを知ることができると同時に、複雑な免疫システムを手に入れた人体の不思議に思いを馳せずにはいられません。また、最終章では日本人の3人に1人がかかるガンの治療に免疫を用いる治療法が紹介されています。まだこの方法は検証段階に過ぎないようですが、免疫研究がいかに可能性を孕んだ分野なのかを実感する良い例でした。これから先の免疫研究は病気治療にも貢献していくことでしょう。『新しい免疫入門』は免疫を理解するだけでなく、人体の不思議を感じさせる本でした。