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感想・書評「飛びたがりのバタフライ:櫻いいよ」ネタバレ注意・物語は、父親からの暴力シーンから始まる(レビュー)。 #読書

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飛びたがりのバタフライ 櫻いいよ ~終盤まで騙される~

この物語は、父親からの暴力シーンから始まる。暴力を受ける蓮は高校2年生。母親は過干渉。子どもながらにして家族は檻に似ていると感じていた。そんな窮屈な世界で、ある日、転校生の観月に出会う。

観月も蓮のように家庭内に事情を抱えていた。似た境遇を持つふたりが引き寄せられ少しずつ自分の中の何かが変わろうとしていた中、今度はふたりを取り巻く周りの人間関係が崩れ始める。家族という呪縛、上手くいかない人間関係に、自由を目指してふたりは逃避行へ。それでも現実が背後から迫ってくる。大人なつもりでいた自分たちを踏み潰すように、高校生という無力さを痛感する。
家庭内暴力という冒頭のシーンでは、似たようなことを受けたことがあったため、容易にそのシーンが想像できてしまった。理不尽だと感じる暴力に抗うこともできず、ただ終わるのを待つしかない無力さ。何故か、抵抗すれば暴力が酷くなり長引くだけだから。とても共感覚性を刺激されるシーンだった。そして、学生の頃に感じたことがある、大人なつもりで子どもだという現実。結局は、家に帰らなければならない現実を呪ったこともある。シーン1つ1つが1度は感じたことのある感情で、読み進める内に心を揺さぶられ、振り回される作品だった。逃避行シーンでは、誰も知らない土地で生まれ変わったかのように希望を感じる端から、自分たちはそれでもいつかは大人たちに見つかるのだという現実が黒く蝕んでくる。希望と不安に揺す振られるふたりに心境の変化が生まれ、激しくぶつかり合う。それは理不尽だという自信があるのに、現実はそれでも覆いかぶさり塗りつぶしてくる。そしてついに逃避行は終わり、日常に戻される。どこを読んでもふたりを応援したくなる。それでも何も変わらなかった日常に、私たちの現実を重ねてしまい憤怒した。ふたりの環境は一見、私たちにはケタが違う世界なはずなのに、細かな心情の描写や人間の反応に引きずり巻き込まれて感情を引っ掻き回されるような作品であった。