『現代語訳・西鶴 好色一代男』(暉峻康隆):プレイボーイとパロディと教訓
井原西鶴の代表作『好色一代男』。そのタイトルからプレイボーイが酒池肉林の遊戯を尽くす低俗な小説と誤解されることが少なくありません。確かに『好色一代男』では遊郭で遊び尽くす世之介が主人公となっていますが、彼の遊びだけが書かれているわけではありません。
当時人気を誇った遊女の気配りや情の深さ、様々な文献の文句を織り交ぜて随所に散りばめられたパロディ的な文章、そして遊女とはどのようにあるべきかという教訓。世之介のプレイボーイ的な人生にはこれらの要素が巧みに織り込まれているのです。ですから『好色一代男』は読む人によって、プレイボーイ・パロディ・教訓の読み取り方が異なり、十人十色の読み方ができる作品になります。この多様な読みを許すのが西鶴作品の魅力だと思います。巻末の暉峻康隆氏の遊郭に関する解説は分かりやすく、太夫が当時最高峰の知識人だったなどの知られざる事実を知って驚く方も少なくないでしょう。西鶴作品の魅力を味わい、江戸時代の正しい知識を得るために本書はオススメです。