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感想・書評『サンショウウオ戦争 カレルチャペック著 ・栗栖茜訳』ネタバレ注意「人類以外の生き物が進化し、人類と同じ文明を持ったら」(レビュー)。 #読書

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サンショウウオ戦争 カレルチャペック著 ・栗栖茜訳・ 読み継ぎたい風刺文学の新訳です。

もし人類以外の生き物が進化し、人類と同じ文明を持ったら、彼らはどうするだろうか?スマトラ島近くの入江で、チェコ出身の船長がサンショウウオにナイフの使い方を教え、真珠採取の仕事をさせたことから、彼らの進化が始まった。

道具を使うことを覚えたサンショウウオたちは、水中に卵を産むための突堤を建設し、天敵のサメを殺し、瞬く間にその数を増やした。二本足で立ち、読み書きや会話が出来るようになり、人間から得た道具で水中都市を築いていく。人間の側も、サンショウウオを使って儲けることを考える。水中ダム工事などの労働者や兵士として、何百万匹ものサンショウウオが売買される。海賊たちがサンショウウオ狩りをする様子は、奴隷貿易さながら。やがてサンショウウオと人間との間に、様々な葛藤やトラブルが表面化する。荒唐無稽、ユーモアに溢れた物語が次第に凄みを帯びてきます。既に数十億匹にも増え、高度な文明と残酷な獣性を合わせ持つ彼らは、ついに戦争を始めるからだ。サンショウウオは人類の戯画なのである。本書は1936年、ナチスドイツが勢力拡大する中で書かれた痛烈な風刺文学です。「現代」「現実」を描いたとチャペックは言ってますね。常に差別や隔たりを作って苦しみ、戦争をする、この人類は幸せになれるのか、という根源的、哲学的問いが時代を超えて響いてくる一冊です。