美の奇人たち ~森之宮芸大前アパートの攻防~ 美奈川護
芸大を卒業してから何らかの問題を抱えている人々が住み着いているボロアパート。そのアパートの管理人の孫の朱里は、住人を全員退去させてアパートをリノベーションできたら、祖父からアパートを譲渡されることになります。
住人に退去勧告を開始する朱里ですが、それぞれの住人がかかえる問題や未練を知っていろいろと協力してしまい、朱里自身がかつて諦めてしまった芸術の道へもう一度戻ろうと考えるようになる、心温まるストーリーです。
主人公は、早く住人を追い出したいのに、住人の抱えている問題を知ると解消してあげないと気が済まなくなってしまうお人好しで、あの手この手で問題を解決しようとする姿が笑いを誘います。
本当はやりたかったのに、無理やり理由をつけ、他人のせいにして絵を描くことをやめてしまった主人公朱里の後悔は、かつて芸術の道を何らかの形で志したことのある人にとっては、特に心を打たれる物語だと思います。これを読むと、また芸術をやり直したいと思うようになるかもしれません。