『漱石の愛した絵はがき』(中島国彦・長島裕子編):絵はがき好きの漱石⁉︎
近代文学のなかで圧倒的に高い評価を受けている夏目漱石。実は夏目漱石は絵はがきを気に入っていたようで、引っ越しの時に手紙類を処分することはあっても絵はがきは残していたそうです。
この漱石が残した絵はがきを紹介し、夏目漱石の人物ネットワークに迫ろうとする斬新な1冊が『漱石の愛した絵はがき』です。本書では夏目漱石の残した約300枚の絵はがきのうち、約100枚を掲載して紹介しています。巻末には絵はがきに書かれた文面が翻刻されており、絵はがきに書かれた文面の内容も知ることができます。絵はがきは明治後期にブームが起こり、夏目漱石もいまだ見たことがない土地を絵はがきで楽しんだことがうかがえます。また、本書で紹介されている絵はがきからは寺田寅彦や小宮豊隆といった一流の人々との親しい交流が明らかとなります。やはり、一流は一流と仲良くなるのだなと感じました。漱石の一生とともに紹介される絵はがきからは、夏目漱石という人物が立体的に立ち上がってくるのです。