『江戸時代翻訳語の世界』(杉本つとむ):日本人と外国語との格闘の歴史
江戸時代、日本ははじめてオランダというヨーロッパの外国と接します。この時、両者の間で際立ったのは言葉の違いに他なりません。そこで日本人はオランダ語を日本語に翻訳することを考えつき、実際に翻訳語を作り出していくのです。
『江戸時代翻訳語の世界』ではオランダ語を翻訳して生まれた101の翻訳語を「自然科学」「医術」「人体」「生活」「ことば」「落索」の6つに分類し、それぞれの言葉の意味や定着する様子を明らかにしていきます。しかも、単なる翻訳語の紹介にとどまらず、江戸時代の図版を利用して翻訳語の使用実態を示したり、四字熟語の源流や成り立ちを日本・中国・オランダの観点から分析してみたりと、翻訳語の世界を縦横無尽に駆け回ります。ジャンルとしては日本語学の領域を扱った本ですが、文系理系にとらわれない言葉に関する教養書ということができるでしょう。日本人がいかに外国語の概念を日本語として取り入れようと格闘した歴史書としても面白く読めます。