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感想・書評「医学書のなかの「文学」:福田安典」ネタバレ注意・江戸時代、なんと医学書が文学作品の素材となっていた(レビュー)。 #読書

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『医学書のなかの「文学」』(福田安典):医学書が文学に?

江戸時代、なんと医学書が文学作品の素材となっていた。こんな現代では考えられないような現象が起きていたことを、江戸時代の文学作品と医学書を付き合わせて突き止めたのが『医学書のなかの「文学」』です。第1章では医学書が読み物として享受され、医者のカルテの雛形が文学作品に登場することが明らかにされていきます。

江戸時代には医学書と文学の境界線が極めて曖昧だったことが分かります。さらに第2章では、文学作品に登場するヤブ医者「竹斎」が様々な名家と関わりあって生み出された人物であり、江戸時代を通じてみんなに愛されるヤブ医者だったということが紐解かれていきます。ヤブ医者すら愛してしまう江戸時代の人々の懐の深さには本当に驚かされるばかりです。逆に言えば、江戸時代の文学作品は文系/理系の対立軸では味わいきれるものではないのです。結章で医学書が文学研究の新領域だと著者が宣言しているのは、あながち誇大表現ではないでしょう。文学/医学・文系/理系の対立軸を乗り越える江戸時代の世界の奥深さ。また新たな文学の世界が拓けたことを実感する1冊です。