『はじめての江戸川柳』(小栗清吾):知的な「クスッ」が満載
江戸時代の川柳は単なる笑いではなく、そこに知的な笑いが含まれていました。『はじめての江戸川柳』は誰でも分かる面白い句を取り上げることをモットーに、江戸川柳によく取られる嫁・姑・仲人などをテーマにした川柳や江戸時代の年中行事を扱った川柳、さらに江戸時代の仕事をテーマにした川柳や遊郭・遊女・歴史を読み込んだ川柳など、多彩な江戸川柳の世界を紹介しています。
古文の知識が一切なくても、思わず「クスッ」と笑える句ばかりですが、江戸川柳の笑いには皮肉や風刺といったマイナス面が一切感じられません。江戸川柳は世の中を皮肉るのではなく、世情や人々をどこか肯定するような温かさに満ちているのです。一方、本書の第9章では難句30句が紹介されており、その句の解釈を知ることで江戸川柳が高い教養レベルで裏打ちされた文芸だったことが分かります。江戸川柳は教養と笑いが両立されたハイレベルな文芸だったのです。魅惑の江戸川柳の世界に足を踏み入れたい方は必読です。